今回は米国株の中でも「高配当ETF」としてよく比較される3つの銘柄【VYM/HDV/SPY】について特徴やパフォーマンスを分析していきます。
この記事はすでに証券口座を開設している人を対象に書かれています。まだ口座をお持ちでない方はこの機会に開設されることをお勧めします。


また、別の記事で私の投資戦略全体についても書いています。あわせてご覧ください。
3つのETFの特徴
3つのETFの全体比較は下記の通りです。
VYM | HDV | SPYD | |
発行 | Vanguard | BlackRock | State Street |
純資産総額(百万米ドル) | 26,278.73 | 5,085.47 | 1,935.70 |
分配利回り(a) | 3.23% | 3.94% | 4.96% |
経費率(b) | 0.06% | 0.08% | 0.07% |
実質利回り(a)-(b) | 3.17% | 3.86% | 4.89% |
資産クラス | 株式 | 株式 | 株式 |
連動指数 | FTSE High Dividend Yield TR USD | Morningstar Dividend Yield Focus TR USD | S&P 500 High Dividend TR USD |
投資地域 | アメリカ | アメリカ | アメリカ |
組入上位銘柄 | 1 JOHNSON & JOHNSON ORD 3.99% 2 PROCTER & GAMBLE ORD 3.45% 3 JPMORGAN CHASE ORD 2.97% 4 VERIZON COMMUNICATIONS ORD 2.51% 5 INTEL ORD 2.23% | 1 AT&T ORD 9.25% 2 EXXON MOBIL ORD 8.56% 3 JOHNSON & JOHNSON ORD 6.80% 4 VERIZON COMMUNICATIONS ORD 6.48% 5 CHEVRON ORD 5.57% | 1 PUBLIC STORAGE REIT ORD 1.55% 2 XEROX HOLDINGS ORD 1.55% 3 BROADCOM ORD 1.54% 4 VENTAS REIT ORD 1.51% 5 LEGGETT & PLATT ORD 1.48% |
経費率については0.06~0.08%とどれを選んでも十分に低いと言える水準です。肝心の分配利回りについてはSPYDが頭一つ抜けていると言えますが、その分のカラクリもあります。これは後に説明します。
次に、各銘柄に含まれるセクターの割合は下記の通りです。
VYM | HDV | SPYD | |
1 | ヘルスケア 16.5% | エネルギー 28.15% | 不動産 17.75% |
2 | 金融 15.7% | ヘルスケア 19.02% | 金融 15.37% |
3 | 消費財 14.6% | 通信 15.15% | エネルギー 12.24% |
4 | 情報技術 11.2% | 生活必需品 8.83% | 一般消費財 11.27% |
5 | 公益 9.4% | 公益事業 8.54% | 生活必需品 10.62% |
6 | 一般消費財 9.1% | 情報技術 7.93% | 素材 8.39% |
7 | 資本財 8.4% | 金融 6.26% | ヘルスケア 8.24% |
8 | エネルギー 6.4% | 資本財 3.35% | 通信 6.31% |
9 | 通信 5.3% | 一般消費財 1.34% | 情報技術 5.23% |
10 | 素材 3.4% | キャッシュ等 0.71% | 消費者裁量 4.59% |
VYMとHDVでヘルスケア、HDVとSPYDでエネルギーが共通していますが、それ以外はさほど一致していませんね。
また、Nasdaqなどに多く含まれている情報技術(IT)は軒並み4位以下となっています。成長産業である分、配当は低めの企業が多いためです。
SPYDには不動産(REIT)が多く含まれていることが特徴で、これが利回りの決定にも大きく影響を及ぼしています。
次にチャートの推移です。過去3年分を週足で表示しています。また、比較のために2017/11/27の終値を100としています。なお再配当は考慮していません。
加えて、参考のためにS&P500(に連動するETF)を黄色の線で記入しています。


パフォーマンスで言えば大体いつでもVYM>HDV>>SPYDとなっている一方で、3つともS&P500には遠く及ばない成長率です。
2020年上旬にコロナショックで大きく下げたのは共通していますが、その後の復活についてもSPYDは遅れています。
この辺りの考察も後に説明したいと思います。
そしてこちらが分配金の推移です。利回りの数字は前述の表の通りですので、ここでは2016年の分配を100としたときの推移だけを見てみます。
※2020年Q4の配当は未完のため、便宜的に4/3倍することで値を出しています。


VYMとHDVは毎年1株当たりの分配金を増加させている一方、SPYDは2017年と2020年で減配傾向が出ています。
この2つの年にはそれぞれリーマンショックと、コロナによる株価の大きな変動がありました。この事実を鑑みると、SPYDは株価下落時には減配となる傾向が見られるように思われます。
VYM、HDVに対しSPYDは色々な傾向が異なっていますが、これには理由があります。
ひとつには、SPYDは不動産と投信の両方の側面を持つREITを多く含むことです。REITは市場の影響の他、不動産であるがゆえに自然災害などによっても価格変動するという点です。また、昨今のコロナ騒動により今後の不動産の在り方についても大きく変動する可能性があると考えています。
ふたつめは、そもそもSPYDはS&Pの中で配当の高い上位80社に「均等に」投資をしています。これらの銘柄は年2回組み替えられますので、構成銘柄がガラッと変わることもよくあります。また、高配当な企業は株価上昇が弱く、かつ景気変動に敏感な場合が多いため、これらの企業を優先的に組み入れていくSPYDも自然と低成長となる場合が多いかと思います。
まとめ
ここで紹介した銘柄3つはどれも流動性と手数料の観点からおすすめできる(購入しても問題ない)ETFだと考えています。



いずれにせよ、高配当ETFだけで資産形成するのは困難ではあると思いますが、戦略の一つとして組み入れるのは大いにアリでしょう。
その上で、成熟した大型株を中心に広く分散投資するVYM、VYMよりも銘柄を絞ってかつ分配金がやや高くなるHDV、と特徴がありそうです。この辺りは好みでしょうか。
一方でSPYDは同じ高配当ETFとはいいつつ中身はかなり異なります。きちんと特徴を理解した上で売買を行うべきでしょう。
個人的には流動性と株価の状況からVYMが一番いいかな?と思います。
今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。
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