営業やカスタマーサクセスの世界では、顧客の所属する業界や売上規模に応じて対応する担当者を変えることがほとんどです。
顧客をLTV(Life Time Value、障害価値)ごとに複数に分け、それぞれに最適なアプローチを取ることで営業戦略を遂行します。
この記事では、代表的な3つの『タッチ』とそれぞれの営業戦術について説明します。
ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチ
営業の3つのタッチとは、それぞれハイタッチ、ロータッチ、テックタッチを指します。ハイタッチはLTVの大きな(つまり売上が期待できる)企業が所属し、テックタッチは逆にLTVの小さな企業が対象となります。
また、当然ですがハイタッチの対象になる企業のほうが数が少なくなります。

この方針で顧客を3つの層に分け、それぞれの層に合わせた人選とアプローチで営業活動を行います。
ハイタッチ
もっとも売上が大きく重要な顧客に対する営業がハイタッチです。
特徴としては大口顧客の要望に応えるため柔軟かつ踏み込んだ提案が求められます。
また、ハイタッチを務めるアカウントマネージャーは経験豊富なシニアであることが多いです。ハイタッチ営業には経験やスキルほか、大企業の管理職や役員と商談をすることも頻繁にあるため、それに見合った風格や肩書が求められます。
企業によってはマネージャーのほか複数名のアカウントチームや専属のエンジニア、サポートがいるケースもあります。
総じて法人営業の世界では花形とされるポジションで、それに見合った報酬を得られることも多いです。
自然と大きな案件を手掛けることも多く営業の醍醐味を味わえますが、案件ひとつの単価が大きいため失注によるリスクも大きくなります。
ロータッチ
ハイタッチほど大口の顧客ではないですが、ロータッチ営業でも顧客ごとにアカウントマネージャーが存在します。
各社個別の対応もしますが、ハイタッチほどフレキシブルではなく、企業毎の特性に合わせた集団的な対応を求められます。
多くの場合営業担当はハイタッチより多くの顧客を担当するため、一社あたりにかけられるリソースは少なくなります。
多くの場合、ロータッチの中でも伸びしろのある企業には個社対応をし、そうではない企業には画一的なアプローチをします。
また、リソースを効率的に使う必要があるため、パートナーや代理店(間接)営業モデルも積極的に活用します。
数多くの企業に対し限られた営業リソースで効果を最大化する必要があるため、ある意味ロータッチ営業の業務をどう設計するかは最も難しいポイントのひとつかと思います。
テックタッチ
規模は小さいが数の多い顧客層に対応するのがテックタッチです。テックタッチの「テック」とはTechnologyの略で、その名の通り様々なツールを駆使して効率的に多くの顧客へ営業することを目的とします。
その性質から営業経験だけでなく、マーケティングや事業開発のセンスも要求されます。
テックタッチは特にインサイドセールスが担当する事が多い領域です。私もIT企業でインサイドセールスとして勤務しており、数百社を担当しています。
インサイドセールスが行うテックタッチ営業方法については別の記事にまとめています。
営業スタイルを分けるメリットとは?
営業スタイルを3つの階層に分ける事によるメリットは、なんといっても顧客ごとに最適なアプローチをできる点と営業リソースを最適化できる点です。
また、3階層それぞれに異なったKPIを設定したり、採用する際も明確に差を意識できるなど、副次的なメリットもあります。そのくらい、ハイタッチとテックタッチとでは期待される役割が異なるのです。
営業スタイルを分けるのはどのタイミング?
では、すべての企業が営業を3つのチームに分けるべきなのか、というとそうではないと私は考えています。
私もかつてベンチャーに在籍していましたが、そもそも営業やエンジニアリングのリソースが限られた組織ではチームを分けてしまうことによって発生する無駄のほうがメリットよりも大きいと感じます。
それよりもまずは全社体制で狙うべき案件に集中したほうが効率が良いでしょう。
また、テックタッチの仕組みには時間とコストが掛かります。顧客管理のCRMなどはもちろん、営業のためのツールなくして成立しませんし、前述のようにハイタッチ営業とは求められる素養も異なるためうまく稼働するのに時間も必要とします。
この辺りの苦労は福田康隆氏の”The Model”という書籍に詳しいです。

営業体制の分割は、全社一丸スタイルでの効率悪化を感じたときや、多くの案件をさばいてパイプラインを安定させたいなどの必要が生まれたタイミングが望ましいと考えます。
また、その際はまずハイタッチとロータッチを分け、更に機を見てテックタッチを分派させる方式が効率が良いでしょう。
おわりに
この記事では営業とカスタマーサクセスに必要な3つの階層の考え方について説明しました。組織が大きくなるにつれこうした役割分担は誰もが通る道かと思います。
チームの分け方や人の振り分けなども悩ましいですが、困ったときは『自社顧客に対し最適なサービスを届けられる編成はなにか』に立ち返って考えることをお勧めします。
今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。
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