私はIT企業でインサイドセールスとして働いています。その前まではフィールドセールス(通常の、客先への訪問などをする営業)を担当していました。
この記事では、従来との営業とは少し役割の違うインサイドセールスという存在と、インサイドセールスが持つミッション、会社への貢献について概要をまとめていきたいと思います。
インサイドセールスとは
インサイドセールスは、インサイド(内勤)という言葉が示すように、客先へ訪問せず電話やメール、チャットで顧客対応を行う営業担当のことです。
訪問をせず、Web会議などでミーティングを行うため、時間当たりの効率が良く、昨今のテレワーク環境下でも普段と変わらずに営業活動を継続することができるため、注目を集めています。
フィールドセールスがすべての顧客をフォローできれば良いのでしょうが、現実的に時間的な制約を考えるとそれは不可能です。
一方で、BtoBの大型商談などでは実際に商談が発生する時点では顧客はあらかたの情報収集とベンダ選定を終えていることが少なくありません。
当然、普段のフォローが足りない企業は商談のテーブルにつくことさえできません。
電話やメールで細かく顧客のフォローができるインサイドセールスは、顧客との良好な関係を維持することにも効果的です。
あくまで私の感覚ですが、フィールドセールスの頃は7割くらいはお客様先に訪問していました。
インサイドセールスになってからは9割くらいがリモートでの商談で、1割くらいは会社見学なども兼ねてご来社頂くこともあります。

インサイドセールスのミッションは”リードナーチャリング”
結論から言ってしまえば、インサイドセールスの大きなミッションは『リードナーチャリング』すなわち見込み顧客に対しより自社や製品を知ってもらい、購買意思を高めて頂くことにあります。
組織によっては自らセミナーを開いたりして見込み顧客のパイ自体を増やすマーケティング的な役割を担うこともありますし、逆にクロージング(成約)までを行う営業的な役割を担うこともあります。
顧客が商品やサービスを購入するまでのフロー
ではなぜ、インサイドセールスの役割=リードナーチャリングがそもそもなぜ必要なのでしょうか。
下の図を見てください。これはパーチェイスファネル(マーケティングファネルとも)と呼ばれる、あるきっかけでサービスや企業を知った顧客が実際に商品を購入するまでの行動を表しています。

マーケティングの役割
マーケティングの役割は主に、自社が狙う顧客層(セグメント)に対し効果的にメッセージを伝え、リードとして獲得することにあります。
典型的な仕事内容としては
- セミナー(オンライン・オフライン)の企画と実施
- Web制作
- Webマーケティング
- SNSの運営とコミュニケーション
- 市場調査
- 宣伝と広告
などです。
自社の売上を構築するため、まずは認知という形で裾野を広げるのが役割です。
営業の役割
営業の役割は具体的な商談の創出と、商談中の各種ステークホルダーとの折衝、そして受注に至ることです。
典型的な仕事内容としては
- 商談獲得
- 商談のファシリテーション・プレゼン
- キーマンとの関係構築
- 戦法組織内での情報交通整理
- オファリング(割引なども含む)
- 見積もり
- 契約
などです。
営業の役割は売るモノと顧客のタイプによって大きく異なりますが、上記ではある程度の規模の顧客に対し、百万円〜程度の比較的高価な商材を提供するような営業組織を想定しています。
リードナーチャリングは見落とされがちなタスク
マーケティング組織と営業組織を抱える企業は少なくないと思いますが、そのふたつのあいだについてはさほど意識されていないのが多くの現状です。
前出のパーチェイスファネルの図を見てください。
マーケティングが獲得したリードが確実な商談になるためには、顧客にサービスを知ってもらい、興味を持ってもらい、会社としての需要を歓喜することが必要です。
この一連の作業がないと、すべてのリードに営業が訪問したあげく結局空振りで終わることになるか、あるいは多すぎるリードを営業がフォローしきれず有望であったはずのリードを逃してしまうことになります。
この、顧客の自社に対する選好度を高めると同時に、有望な商談をスクリーニングする作業こそがリードナーチャリングの意義です。
ある調査によれば、認知から購入までに何らかのナーチャリングを必要とする顧客は全体の65%にのぼる、とも言われています。
インサイドセールスの役割とタスク
ここまでで、インサイドセールスとはリードナーチャリング+αのミッションを持つ組織であることを説明しました。
具体的にインサイドセールスがリードナーチャリングの中こなすタスクは以下のようなものになります。
- イベントなどのフォローアップ
- 現状と今後をヒアリング
- Q&A対応
- 継続的な情報提供
- アップセル、クロスセルの提案
- 顧客のプロジェクト予算確認
- 顧客内での承認者確認
- 必要性の見極め
- 実現までのタイムライン(時間軸)
特に最後の4つは、それぞれBudget(予算)、Authority(承認)、Needs(ニーズ)、Timeline(時間)という英単語の頭文字を取って『BANT(バント)』と呼ばれています。
初期の商談においてBANTの確認は確度の見極めをするのに非常に大切な指標となります。いつまでもBANTの確認が取れない商談は、顧客の真剣度が低く実現の可能性が低いためです。
また、インサイドセールスはこうしたタスクを電話、メール、チャットなど、顧客先への訪問をせずに実行することが大きな特徴です。これがインサイド(内勤)セールスと呼ばれる所以です。
リードナーチャリングを通じて、より確度の高い商談を作っていくことがインサイドセールスに求められる役割になります。
なお、インサイドセールスに求められるスキルや人物像についてはこちらの記事をご覧ください。
インサイドセールスを導入する意義
前述の通り、潜在的にナーチャリングを必要とする顧客は65%も存在します。この、リードナーチャリングというタスクは極めて重要でありながら専任の組織がいないことが非常に多いです。
私がかつて在籍したいくつかの企業でも、マーケティングが獲得したリードは営業がフォローしつつ商談を発見するような棲み分けになっていました。
しかし、多くの企業でマーケティングはリードの獲得に、そして営業は少しでも確度が高く受注金額の大きい案件にリソースを取られがちです。
次の売上となるような潜在顧客について十分に注視できているという企業は少ないのでしょうか。
インサイドセールスはこうした構造的なボトルネックを解消し、営業活動を効率化するインテリジェントな組織なのです。
また、インサイドセールスは素養がある人であれば一人前になるまでの期間がフィールドセールスよりも短いことが多いです。そのため、営業職の若手や新入社員のポストとしても適しているでしょう。
多くの商談を経験することは、将来的にフィールドセールスに移ったとしても生きてくるはずです。
インサイドセールスのやりがい
インサイドセールスはその立ち位置上、マーケティングと営業の両方を垣間見ることのできるポジションです。
また、訪問せずに電話やメールで営業活動を行うという性質上、時間を有効に使えますのでフィールドセールスよりも多くの顧客をアカウントセットとして持ちます。
私の考える、インサイドセールスに適正のあるのはこんな人です。
- フィールドセールスをやっていたが、マーケティングにも興味がある
- マーケティングをやっていたが、営業にも興味がある
- 商談や各種のアクティビティを数字で定量的に捉えることができる
- 「仕組み化」が得意である
- 顧客の抱える課題に対し、素早く気づくことができる
- プロダクトアウトにならず、課題解決型の対話ができる
上記のような特徴にあてはまる、または興味を持てる人はインサイドセールスとしてのチャンスがあるといえるかと思います。
私の思うインサイドセールスの魅力とは、多くの顧客の課題に寄り添い、解決に導くことができる所です。また、特定のやり方にこだわらずツールやコミュニケーションのやり方を柔軟に使い分けられる余地があるところもユニークだと思っています。
まとめ
この記事では、インサイドセールスの役割と活躍できるフィールド、組織にインサイドセールスを導入する意味などについて説明しました。
私もまだまだベテランには程遠いですが、効率化と課題解決の両面を追求できるインサイドセールス職はとても創造的で奥深いものだと思っています。
この記事を読んでいただいた方が
- 自社にインサイドセールスを導入したい
- 自分もインサイドセールスを目指したい
と思っていただければ無上の幸せです。

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。
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