マネージドサービスとは何か その種類と範囲、MSPを利用するメリット

Managed Service Provider クラウド/DX
クラウド/DX

本格的にクラウドの利活用を検討していると、馴染みのない言葉に出会うことがあります。特に「マネージドサービス」という言葉は定義が曖昧で、それぞれ抱くイメージも異なっているのではないかと思います。

この記事では、クラウドにおける「マネージドサービス」の意味することと、その種類、メリットについて概説します。

マネージドサービスの定義

マネージドサービスとは直訳すれば『管理されているサービス』で、その言葉通りにユーザがリソース管理の全て、あるいは一部をベンダ側に委ねられるサービスのことを指します。

マネージドサービスの全体像としては下記の図のようになります(※SaaSモデルは割愛)。この図ではクラウドのテクノロジーを各レイヤに分割して記載しています。図中オレンジの部分はユーザが管理する領域で、青の部分はベンダが管理する領域、すなわちマネージドの範囲になります。

この図のうち、IaaSとPaaSはAzure/AWS/GCPといったいわゆるクラウドサービスの通常モデルで提供されます。この記事ではこれらを狭義のマネージドサービスと呼ぶことにします。

一方で、図中右端のモデルでは一般的なクラウドサービスだけでなく、クラウドの管理を専門にするサードパーティのサービスを組み込むことがほぼ必須となります。これを広義のマネージドサービスと仮に呼称します。

どちらもユーザから見た管理の手間を削減できることに変わりはありませんが、この二つは得てして違う文脈で使われることが多いためあえて分類することにします。

狭義には:クラウドベンダが提供するSLA付きサービス

まずは一つ目の、狭義のマネージドサービスについて説明します。

おさらいにはなりますが、以前に当ブログ内別の記事で紹介させて頂いたように、クラウドにはIaaS/PaaS/SaaSのような複数の提供形態が存在します。

例えばこのモデルの中からIaaSの提供形態を考えてみます。下の図はAWSで責任共有モデルと呼ばれる、AWSとユーザの責任範囲の棲み分けです。

Shared_Responsibility_Model_V2_JP
https://aws.amazon.com/jp/compliance/shared-responsibility-model/

AWSの代表的なIaaSサービスであるEC2では、AWSは地上どこかにあるデータセンターと、そこから提供される物理的なインフラ、更にそれを仮想化するソフトウェア(ハイパーバイザ)までに責任を持ちます。

また、EC2のSLAは99.99%で、それを下回る場合は返金などの措置を受けることができます。

つまり、AWSは仮想サーバという機能を、独自に管理する仕組みを付与した上でユーザに貸し出しているのです。

このように、狭義のマネージドサービスはあらかじめクラウドプロバイダが提供するセルフサービスのメニューの一つであり、SLAやSLOを持つケースが多いです。

IaaSではなくPaaSやサーバレスであっても概念は同じで、クラウドプロバイダはアプリケーションやデータ、細かな設定以下のレイヤを抽象化してサービスパッケージとして展開します。ユーザはそれらを選んで組み合わせて利用します。

ですので、クラウドプロバイダ側のドキュメントなどで「このサービスはマネージドです」と表現される時は、アプリケーションとデータの実行環境までをクラウドプロバイダ側で管理して提供している、という意味になります。

広義には:サードパーティまで含めた統合保守運用コンサルサービス

狭義のマネージドサービスでは、クラウドプロバイダはクラウドプラットフォームそのものの責任を負い、ユーザはクラウドの中のアプリケーションやデータに責任を負うことになっていました。

一方で、広義のマネージドサービスではユーザはサードパーティ企業と契約を結ぶことにより、クラウドプロバイダが面倒を見てくれない範囲までをアウトソーシングすることが可能になります。

クラウドの世界ではこうした包括的なサービスを提供するベンダを特にMSP(Managed Service Provider)と呼ぶことがあります。

MSPの提供する広義のマネージドサービスの価値は、単にインフラの見守りに留まらず、ユーザがクラウドを使い倒す上で必要な知見をもたらすパートナーとなることにあります。

以降、広義のマネージドサービス提供者をMSPと呼びます。また、MSPの提供する価値をいくつかの要件に分類しつつ説明します。

技術要件

前述のスタック図にも記載がありますが、MSPはクラウドプロバイダが踏み込めない領域までをサービスとして提供することが可能です。具体的な例は

  • リソースの監視(死活監視、スパイク、不正検知)
  • データの定期バックアップとリストア
  • セキュリティガイドラインに則った運用と開発
  • アフターサポートと障害対応

などがあります。いずれもクラウドの中にデプロイされたリソースには立ち入れないクラウドプロバイダには提供できないサービスです。

これらのサービスはオンプレミスでもよくある内容ですが、すでにオンプレミスで保守を委託している場合でも新たにクラウド用の監視基盤を追加するのは容易ではありません。

また、既存のオンプレ監視基盤(日立のJP1やNRIのSenjuが有名)にクラウドの監視機能を統合したいという話もよく耳にします。

こうした場合にはクラウド専門のMSPを頼るのも一つの手段かと思います。

請求課金(事務)要件

また、見落としがちですが、クラウド特有の課金の仕組みも思いがけず工数のかかる要因になりがちです。

多くの企業では部署単位やプロジェクト単位での予算管理をされているかと思いますが、何も考えずに一企業一アカウントで運用すると、どのユニットがいくらクラウドを利用したかの区別をつけるのが非常に難しくなります。

もちろんリソースごとに割り振られたUIDなどをベースに各ユニットに紐付ければ後から仕分けすることは可能ですが、プロジェクトに関わるでもないバックオフィスの方がこの作業をやるのは、実態に追いつけず非現実的です。また、ユニットで利用するリソースは容易に増減するため、業務に対し管理するコストが見合いません。

多くのMSPでは、クラウドの再販者(リセラー)も兼ねることによって、ユーザに対する課金の管理と仕分けに対応しています。

ユーザの側では、MSPから送付される任意の単位の請求書を、任意のワークフローで決裁すれば良いのです。

各クラウドにおける契約と課金のスキームについては当ブログの別の記事をご覧ください。

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ビジネス要件

MSPがユーザのパートナー足り得るためには、必要最小限なサポートやアフターケアのみならず、顧客のビジネスを芯から理解し、最適なIT戦略を提案する能力が必要になります。

クラウドの機能/非機能要件は常にユーザのビジネスと合わせ鏡でなくてはなりません。

例えばユーザが新たにクラウド上で構築したサービスをローンチしたい時、MSPは過去の経験や既存サービスのアーキテクチャから、ユーザが実現すべきアーキテクチャとビジネスのROIに見合ったロードマップを提供します。

実際のところ、多くのMSPは技術要件と事務要件を提供するにとどまります。顧客のビジネスを加速するクラウド活用提案ができるMSPはそう多くはありません。

クラウドプロバイダでは、こうしたプロアクティブな提案と顧客ビジネスの最適化ができるケイパビリティを持ったMSPを特別なパートナーとして認定しています。

例えばMicrosoftのAzure Expert MSPや、AWSのAPN Premier Consulting Partnerがそれに該当します。

もしあなたの企業が真にクラウドファーストを目指すのであれば、まずはこうしたMSPに相談してみることをお勧めします。

マネージドサービスを使うメリット

このセクションでは、狭義・広義のマネージドサービスの特徴を総括して、法人におけるクラウド利用でマネージドサービスを利用するメリットについて述べたいと思います。

インフラ以上のレイヤに集中できる

オンプレミスサーバを自前で運用するのに比べ、マネージドサービスではインフラのお守りをアウトソーシングすることが可能になります。

IaaS/PaaSであれば実行環境の一部はクラウドプロバイダが担ってくれますし、MSPに任せればエージェント等を使った死活監視や、万が一の障害の際の切り戻しもサービスとして提供しています。

ユーザはその分、ビジネスの優位性に繋がりやすいアプリケーションの領域に集中することができます。

開発を短期間化できる

マネージドサービスを利用すると、アプリケーションを実行する環境や、開発後の運用を従来よりも削減できるため、チームはより開発に注力でき、その分開発期間の短縮にも繋がります。

変化の激しい昨今においては、リリースまでの期間短縮は単純に人的コストを削減するだけでなく、ビジネスのアイデアをより素早く市場投入することができます。

バックオフィスまで含めた運用負荷の低減

この記事を読んでいただければ、オンプレミスとクラウドとでは事務的な運用もずいぶん違うことがお分かりいただけるかと思います。

オンプレミスと違ってクラウドでは基本的に利用した分だけ請求されます。それがメリットでもあるのですが、毎月手動で経費処理をするのは非常に煩雑です。

狭義のマネージドサービスではなかなか実現が難しいのですが、広義のマネージドサービス、すなわちMSPを介した事務処理フローではバックオフィスの負荷をも削減することができます。

かつて私が耳にした情報では、ある会社ではクラウドの社内利用分の振り分けと外販のための請求書発行で毎月2〜3人月を費やしているという例もありました。価格にするとゆうに100万円を超えるかというようなオーダーです。

開発の効率化などに比べ、バックオフィスにかかる費用の削減やBPOは軽視されがちです。

ともすれば、アウトソーシングで解決できるはずの作業に多大なコストを支払い、かつそれが顕在化しないようなケースも起きがちでしょう。

マネージドサービスを検討の際は、是非こうした目の届きにくいメリットにも着目いただければと思います。

ビジネスを発展させるためのパートナーシップ

MSPにはユーザのビジネスを促進させる効果も期待できます。

多くの企業にとってITの利用は手段であり、目的はそれぞれのビジネスをより効率的に展開することです。

経験と実績の豊富なMSPは、ITを駆使して顧客の課題を解決する方法を知悉しています。こうしたMSPはユーザ企業のクラウド化ステージを見極めた上で、よりシステムを効率化する手段を提案してくれます。

まとめ

この記事では、クラウドでよく出現する『マネージドサービス』について解説しました。

マネージドサービスはその文脈において、

  • クラウドプロバイダがSLAや可用性を担保してくれるサービス
  • サードパーティが提供する、クラウドの統合的なコンサルティングサービス

の含意があることを説明しています。前者はユーザがアプリケーションや何らかの処理を実行するための環境を提供し、後者は運用や事務作業まで含めたクラウドの運用サポートを意味しています。

これらは「ユーザの負荷低減」という点では共通していますが、解決したい課題によって全く異なる検討軸になることがご理解いただけたのではないでしょうか。

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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