先端IT人材を育てるために:クラウドへの教育投資がもたらす組織生産性の向上

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クラウド/DX

私は普段ITの営業の仕事をしていますが、お客様から頻繁に聞くブロッカーとして、「社内に新しいITを扱える人材がいない」というものがあります。

今回は、企業で不足するIT人材の全体像についての説明と、一部の企業がどのようにIT人材の確保をしているか、IT人材確保のために実践できる施策について解説します。

IT人材はいよいよ不足する

まず、経済産業省の『IT人材の育成』レポートから日本国内でのIT人材の概況について把握していきましょう。

IT人材の育成(METI/経済産業省)

この資料によると、需要の伸びを年平均 2.7%程度、労働生産性が年 0.7%上昇することを前提とした時、各年度での人材不足数は下の表のとおりです(※楽観シナリオと悲観シナリオの中間を取った場合)。

年度2018年2020年2025年2030年
不足人数22万人30万人36万人45万人

IT人材への需要が伸び続ける一方で、少子高齢化と労働人口の減少が進む日本ではIT人材の供給はなかなか増加しません。下の表がIT人材の供給予測になります。

年度2018年2020年2025年2030年
供給人数103万人106万人111万人113万人
対策年比(%)2.9%4.7%1.8%

供給人数は前年比で数%前半でしか増加しないことが理解できると思います。一方で、需要人数は年率10%程度増える予測となっておりますので、IT人材の需供のギャップは広がるばかりと言えそうです。

また、最近特に話題のAIを扱える人材となると、更に需供のギャップが広がります。AIの需要成長を年率16%と仮定した時、不足人数は下記の通りとなります。

年度2018年2020年2025年2030年
不足人数3.4万人4.4万人8.8万人12.4万人

需供のギャップ傾向はAIだけでなく、クラウドや機械学習、Big Dataなど先端ITに共通しています。

一方で、COBOLなどレガシーなシステムに利用される人材は潤沢なのでしょうか。次のセクションで説明します。

レガシーシステムを抱え投資が伸びない

IT人材の需要に対し供給が追いつかない予測については前述のとおりですが、日本のIT推進を更に下押しする要因も存在します。

それが、経済産業省のDXレポートに記載された通称『2025年の崖』です。

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

このレポートが発表された2018年当時で、企業内において21年以上の長期に渡り使用されている基幹システムは全体の2割に登ります。また、状況が変わらず2025年を迎えると、この割合が6割にまで上昇します。

もともとこれら「レガシー」と呼ばれるシステムの多くは古いテクノロジーで開発され、かつ企業独自の仕様により極めて複雑な仕様となっていることが多くあります。

さらに、これらの複雑なレガシーシステムの保守をできる人材の多くが高齢化または退職を迎えることが予測されており、今後はますます保守要因の調達コストが高騰することが予測されます。

つまり、可及的速やかにレガシーシステムを廃棄、刷新することにより技術を新しくする、あるいは塩漬けにするものを選別することにより調達コストを低減しない限り、先端IT人材に投資を回す余地はますます小さくなっていくでしょう。

アジア諸国と比べ、IT人材の教育と供給が遅れている

アジアの諸国と比べても日本の平均的なITスキルは決して高くありません。

2016年の経済産業省の調査によると、ITスキルが最も高いのはアメリカ、インド、中国で、日本はタイやベトナムに劣るレベルとなっています。

また、ITに関わる人の給与所得に関する意識では、「この仕事は給与が高い」と答えた人の割合は調査対象国の中で日本が最低となりました。

出典:経済産業省「IT人材に関する各国比較調査」(2016年6月)

以上の話を統合すると、日本国内におけるIT人材のスキルと待遇は諸外国に比べ劣っており、そのためIT人材の供給量も大きく増加しない状況であると言えそうです。

これはひとえに日本企業はじめ政府、自治体がITに感じている価値が低いことを意味すると思いますが、ITへ投資することはそれほどまでにメリットの薄いことなのでしょうか。

IT人材に投資する複合的なメリットとは

ここからは、調査会社IDCが発行した、クラウドに関するトレーニングと、それが生む効果についてまとめたホワイトペーパーを読みつつ先端IT人材に投資することのメリットについて説明したいと思います。

※遷移先のページで個人情報の入力が必要です。

AWS Support and Customer Service Contact Info | Amazon Web Services
On this page, you’ll find info regarding the different ways to get in touch with AWS support, including Sales, Technical, Compliance, and Login support.

このホワイトペーパーによると、クラウド教育への投資により、下記のような成果が上がることが報告されています。

  • ビジネスおよび内部目標の達成:包括的なトレーニングを受けた組織は、クラウドがイノベーションを促進することに気付く可能性が2.7倍高く、クラウドがITスタッフの生産性を向上させる可能性が4.7倍高い
  • 内部の懸念を克服する:包括的なトレーニングを受けた組織は、クラウドのROI要件を満たす可能性が3.8倍高く、運用/パフォーマンスの懸念を克服する可能性が4.4倍高い。
  • クラウド導入の加速:包括的なトレーニングを受けた組織は、クラウドの導入が80%速くなり、制限された展開からより完全な展開に移行する可能性が1.9倍高くなります。

このように、クラウドのような新しい技術教育を受けた組織は、イノベーションの可能性と生産性を大きく向上させることが報告されています。

では、これらの先端IT教育プラグラムはどんな切り口で検討すればよいのでしょうか。

人材教育プログラムの検討方法

このセクションでは、実際に企業の教育カリキュラムにクラウドやAIのような先端ITを導入していくためのいくつかのヒントについて紹介をしたいと思います。

Webスキルのパーソナルジム【WebCamp】

社員が自由にITへアクセスできることを考えてみる

ひとつめのヒントは合同会社DMMの例です。

DMMでは「MotivativeとAWS」ということで、社員、特に若いエンジニアの知的好奇心を向上させるためにクラウド教育を取り入れておられます。

新入社員に対してはawsのAWS Technical EssentialsとArchitecting on AWSの有償講座を提供し、AWS Organizationsを活用し、各個人に独立したAWSの環境を提供、月額100ドルまでを利用可能としています。

教育プログラムで知識を補い、月100ドルまでの利用枠を与えることで、社員の創造性を育てる仕組みといえるでしょう。

資格を奨励するプログラムを導入する

学習の入り口としては、受験にかかる費用を会社側で負担することも有効です。

すでに英語や簿記などの資格、あるいはITパスポートや応用情報など一般的なITを会社奨励している企業は多くあるかと思いますが、こうした新しい資格を取り入れている企業は多くはないのではないかと思います。

AWSやAzureなどの資格を取ることのメリットやその方法については当ブログの別の記事にもまとめていますので、ぜひご覧ください。

外部のサービスを利用する

また、外部のサービスを検討してみることも有効でしょう。

独学や資格取得よりも高額になる可能性もありますが、用途や知識前提に合わせてコースを選択できるのは教育サービス専業企業の強みです。

DX推進人材育成| IT研修のトレノケート
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並行して補助金も検討する

また、これらの教育プログラムを検討するのと並行し、助成金も取得できれば金銭的なハードルは大きくさがるでしょう。

例えば、厚生労働省の人材開発支援助成金であれば、例えば下記のような助成金が存在します(その他、IT以外の特定の業種や、しょうがい者に対し給付されるものもあります)

  1. 特定訓練コース
  2. 一般型訓練コース
  3. 教育訓練休暇付与コース
  4. 特別育成訓練コース

いずれも実施機関、対象者の年齢、OJTを伴うものか、などで区分けがなされます。

資格やクレジットというより、専門の教育サービスのようなコースであれば対象となるかも含め相談ができると思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html

まとめ

この記事では、日本国内で不足するIT人材の現状と、その背景、およびIT人材教育のためのいくつかの手段について紹介しました。

冒頭のように私もITに関する仕事をしていますが、人材の不足は大きな問題となっており、企業の生産性に直接関わってくるものと考えています。

一方で、特に若いエンジニアは新しい技術に触れる事自体がモチベーションを高める要因となっており、人材の育成と流出防止の二つの意味で、先端IT教育への投資は避けられないものと思っています。

従来は社員が自由に試行錯誤するような環境を構築することは簡単ではありませんでしたが、クラウドを前提とすれば上限付きの開発環境を提供することも容易です。

まずは、各社の取りうるリスクの範囲で新しい教育手法も検討されてはいかがでしょうか。

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今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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