国内銀行勘定系システムが3メガクラウドに対応発|金融システムの歴史とともに解説します

クラウド/DX
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つい最近ですが、地銀とクラウドに関連したこんなニュースが報じられました。

北國銀行、日本ユニシスのクラウド型勘定系システム「BankVision on Azure」を採用
 日本ユニシスのオープン勘定系システム「BankVision」の稼働基盤に日本マイクロソフトのパブリッククラウドサービスMicrosoft Azureを採用した「BankVision on Azure」を、株式会社北國銀行が採用すると、21日、発表した。なお、フルバンキングシステムにおけるパブリッククラウドの採用は、国...

これによると、金沢に本店を持つ地方銀行である北國銀行と、現行勘定系システムベンダである日本ユニシスが、同社の勘定系をパブリッククラウドプラットフォームであるMicrosoft Azure上で稼働させることを発表しています。

ユニシス製勘定系がAzure上で稼働検証に入っていることは2018年時点で既に報道されていましたが、今回のプレスリリースによって正式に本件がユーザありきのプロジェクトとして発足されました。

3メガクラウドすべてに「勘定系移行」の報道が出た

これに対して既に2018年6月時点でソニー銀行が富士通をベンダとし、AWS上で時期勘定系を構築することを発表しています。

勘定系にAWS採用、ソニー銀行が見込む効果
 国内の金融機関でいち早くAmazon Web Services(AWS)を導入したソニー銀行。これまで勘定系システムはAWS採用の対象外としていたが、2017年後半に勘定系システムの一部でAWSの採用を決定した。2019年秋以降に本番稼働する計画で、単独で銀行の勘定系システムをクラウドで動かす国内初の事例となりそうだ...

また、福岡銀行を中心とするふくおかフィナンシャルグループがGCP上で勘定系を含むデジタルバンク立ち上げを発表したことは当ブログでも何度かお伝えしてきました。

海外では既にフルクラウドどころか、周辺システムを含む全てをクラウドで構築している銀行もありますが、上記報道で日本でも銀行勘定系システムのクラウド化プロジェクトが正式に出揃ったことになります。

ちなみに東京三菱UFJ銀行などクラウド活用を発表している金融機関は他にも多くありますが、勘定系までを正式に発表したという意味ではこのケースが最後になります。

そういった意味では2018年と2019年の2年間で勘定系のクラウドが発表されたことになりますのでいよいよ業界の雰囲気も変わってきたのではないかと思います。

少なくとも、過去の膠着状態からは大きく様相が異なるはずです。

銀行基幹システムの歴史について

少し、銀行システムの歴史を振り返ってみましょう(といっても、私も生まれる前に始まる話ですが)。

銀行にオンラインシステムという概念が生まれたのは1960年代のことでした。前回の東京オリンピックが1964年でしたので大体その頃といえば時代がわかるのではないでしょうか。

今とは異なり日本経済が右肩上がりで伸びていた時期ですので、当然国は豊かになり、それに伴い金融に対する需要もどんどん上がってきます。日本で初めてオンラインシステムを稼働させたのは当時の三井銀行(現在の三井住友銀行)でした。

そして1970年代には第二次オンラインシステムが稼働します。普通預金、定期預金、積立預金を一括して扱える総合口座や、各種手続きを即時ではなく日次などにまとめて実行するバッチ機能など、現在まで続く銀行システムの基礎的な概念が誕生しました。

そして、特筆すべきは、この頃までは銀行内でシステムの制御プログラム(OSのようなもの)とそこに載せる業務アプリケーションは内製されていたらしいです。

そして1980年代には第三次オンラインシステムが稼働します。プラザ合意によってドル円の固定レートが廃止されたのが85年ですので、まさに日本経済が世界に存在感を示していたころです。

この頃になると流石に銀行内ですべてのソフトウェアを賄うことができなくなって、ベンダにハードウェアと基本的な制御ソフトウェアの開発運用とを委託され始めます。これが今に続くITアウトソーシング文化の走りです。また、「枯れた技術」の代名詞となっているCOBOLが使われ始めたのはこの頃です。以外に最近ですね。

ちなみにJavaの登場時期が95年頃なので、この頃はまだオープン系の概念はありません。

この頃に出現し、現在まで続く銀行のコアシステムはメインフレームと呼ばれるもので、現在主流になっているWindowsやLinux OSがインストールされたサーバとは異なります。

メインフレームは汎用機(当時の概念では汎用的=多目的に使えた、という意味)とも呼ばれ、その名に反してどんなOSやソフトウェアでも動くわけではありません。目的に合わせて高度に改造されていますので、ノウハウのない人がおいそれと運用したり機能追加することは困難です。

したがって、1980年代にメインフレームの外注が始まってから今まで、基本的に銀行の勘定系システムには抜本的なアーキテクチャ変更などがなされないまま機能追加と各種制度対応などが施されて現在に至るという場合が非常に多いです。

勘定系システムのクラウド化が意味すること

ここまでで前置きが長くなりましたが、こういった大部分がメインフレームで運用されているシステムがクラウド化されるということの意味は何でしょうか。

まず、クラウドで動くOSはその時点で市場に普及しておりかつLinuxであればディストリビューションが安定しているもの(RHEL、Ubuntu、Cent OS、SUSEなど)、Windowsであればサポートが継続しているものに限定されます。

ですので、勘定系システムをクラウドで動かそうとすれば、まずメインフレーム仕様のアプリケーションをこれらのOSに載せ替える必要があります。

もちろんこれは骨の折れる仕事で、アーキテクチャどころか開発フレームワークや言語ごと変更する必要がありますので、大きな投資も必要とします。それでも大きなメリットがあるからこそ、この2年の大きなパラダイムの変化があったと考えます。

一般的にクラウドのメリットとしては、自前でサーバやデータセンタを用意しなくていいためハードウェア等にかかる費用が不要であることですが、勘定系システムの規模になるとそれはあまり重要ではありません。

なぜならば、サーバ本体の費用よりも古いメインフレームとそのアプリケーションの保守費用のために支払うコストが実際は遥かに大きいからです。

また、クラウドにシステムを載せるということはありふれたOSに対応するということですので、これまでのように特定の会社しか一切手を入れられないということがなくなります。アプリケーションのロジックは流石に誰でもいじれる訳ではないでしょうが、インフラ層の総維持コストは大きく圧縮できるはずです。

更にメインフレームはこの性質から敢えて枯れた技術に手を入れず延命することが多くありましたが、クラウドに載ったシステムはその性質上定期的なアップデートを強いられます。ですので、構造的にまずい部分も塩漬けにできず随時対応していくことを半ば強制されます。

まとめ:勘定系システムのクラウド化は金融ITの民主化

本記事では、最近報じられた銀行勘定系システムのクラウド化について、今までの経緯も踏まえて説明しました。

勘定系システムのような各社の独自性が高く、かつ閉じたテクノロジーで開発されているシステムをクラウド化することの本質は、オープンな技術を活用することで今までのベンダーロックインの回避や開発スピードの向上を見込むことにあります。

また、勘定系システムで主に使われているCOBOLのような古い言語は遠からずエンジニアが枯渇することが推測されています。経産省のレポートではこれを「2025年の崖」と表現しています。

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

つまり、勘定系システムのクラウド化は、閉ざされたITシステムの独裁を民主化していく試みだと言えます。この取組によって、日本のITがふたたび競争力を取り戻すことを願ってやみません。

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

【ゼロからおさらい】統計学の基礎講座

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