FFG みんなの銀行とSBIホールディングス iBANK事業構想から考える地銀の未来

Google Cloud
Google Cloud

以前、当ブログではふくおかフィナンシャルグループがGoogle Cloud Platform(GCP)を利用して「みんなの銀行」の仮称でデジタル専業の新銀行を立ち上げることを発表した旨、記事化させていただきました。

おかげ様で公開以降も当ブログ中の記事をけん引する閲覧数となり、銀行のデジタル化に対する世間の関心の高さを改めて認識しました。

本記事では、これらの状況と他社の動きも踏まえつつ、主にITによる地銀のこれからの動向について推測を述べたいと思います。

なお、言うまでもないことですが、本記事の内容は公表情報を除き筆者の私見に基づきます。記事中に登場される企業団体の見解ではないことをご承知おきください。

改めて地銀の置かれている概況

まずは改めて地銀がいまさらされている状況のWrap-upになります。より詳細には上記の記事の方をご覧ください。

前回の記事では地銀は3つのマクロ環境から窮地に立たされていると説明しました。すなわち、

  • 長引く超低金利政策、逆ザヤになった国債リターン
  • 地方で加速する少子高齢化と労働人口減少
  • デジタルネイティブ企業の金融業参入

です。本業で稼ぐ余地が減少すると同時に強力な外敵にさらされることで危機を迎えています。

苦肉の策で踏み出した高リスク融資や株式などの運用では逆に大きな損失を出したり、経営上過度なリスクをはらんでしまう結果となるケースも散見されています。特に代表的な例がスルガ銀行の件などでしょう。

この状況を打破するためには当然、新たな利益源を創出し、同時に総コストを減少させるしかありません。

そのため、近年急速に発展しているIT業界のイノベーションに注目が集まっています。

しかし、様々な歴史的背景が重なり、現状地銀の多くはデジタルを使いこなせているとは言えず、今もなお膨大なIT的負債(バランスシート的な意味ではなく、付加価値を生まないコストセンターという意味で)を支払い続けています。

それでは、地銀はITを使いこなし付加価値を創出していくうえでどういった観点を取り入れていけば良いのでしょうか。

カギは『顧客タッチポイントの創出』と『情報システムの効率化』

私の発想としては2つです。それはWeb上に顧客が使いやすいと感じるタッチポイントを構築してユーザと新たな関係を築いていくことと、よりモダンなITインフラを利用してTCO(Total Cost of Ownership、システムに係るコストの総計)を下げることです。

この2点についてFFGのビジネスを例に説明します。

クラウドコンピューティングによるTCOの削減

まず一つ目が、みんなの銀行のプラットフォームに選ばれたGCPのような、いわゆるクラウドを利用したインフラストラクチャコストの削減です。

技術的な詳細は省きますが、いま銀行の基幹系システムの多くはメインフレームと呼ばれる各ITベンダー謹製の大型コンピュータで稼働しています。

普通のPCやサーバであれば自前でマシンを調達してWindowsなりLinuxなりOSをインストールすれば触ることができますが、独自性の極めて高いメインフレームはそうはいきません。

拡張や保守には高い専門性が必要となり、どうしても高コストになります。また、中のOSやソフトウェアのライセンスそのものも非常に高価です。

一方でクラウド上ではメインフレームのミドルウェアは動きません。その代わりにWindows ServerやLinux(RHEL、CentOS、Ubuntu…)が稼働します。これらの汎用的なミドルウェアはメインフレームに対する概念として「オープン系」などと呼ばれたりします。

また、クラウドの特性としてサービスプロバイダ(GoogleやAmazonやMicrosoft)が大量のインフラを調達し、ユーザはそれを時間利用するモデルが一般的です。従来の自前インフラが分譲マンションだとするならばクラウドは賃貸(しかもほしい時には部屋の広さそのものも拡張収縮できる)と言えばわかりやすいでしょうか。

さらにクラウドでは運用保守の手間を自動化し、人力による対応を極力減らすための種々の工夫があり、モダンなシステムを維持するための費用をオンプレミスよりも削減することができます。

こういった特性を睨み、FFGはインフラにGCPを、そしてクラウドをはじめとする先端のITを使いこなすためのパートナーとしてアクセンチュアを選んだものと思われます。

また、このインフラ選定は2つ目の「タッチポイントの創出」にも大きく関係してきます。

タッチポイントの創出

タッチポイントとは近代のマーケティングでは主流となっている概念で、企業の提供するコンテンツやサービス、その他情報とユーザとが触れ合う接点のことを指します。

従来の銀行であれば、店頭ももちろんタッチポイントですし、コールセンターや訪問の営業マン、インターネットバンキングもすべてがタッチポイントです。

ですが、ここで私がいうタッチポイントとはモバイルを中心としたWeb上での狭義のタッチポイントを指します。今や言うまでもなく世界中の人がスマートフォンやタブレット端末を駆使して情報を集めていますし、購買を含む種々の決定をWebで行っています。

スクリーンタイム調査で判明した1日のスマホ利用時間、20代は5時間25分!|@DIME アットダイム
朝起きたらまず確認し、通勤電車・仕事の休憩中もちょくちょくチェックし、寝る前にもまた見ておく…そんなスマホありきの毎日を送っている人は多いだろうが、実際のところ、世間の人たちはスマホで何のアプリを主...

そして、地銀発のタッチポイントとして、FFGはiBankマーケティングという会社をスピンアウトさせ、スマートフォンアプリなどを開発、運用しています。

銀行公式無料マネーアプリ Wallet+(ウォレットプラス)|iBankマーケティング
Wallet+は銀行口座の残高照会や入出金明細をスマホで確認できる、銀行公式無料アプリです。夢や目的ごとにアプリ内で自由にお金を貯めることができる「目的預金」機能も搭載。あなたもスマートなお金との付き合いをはじめよう!

このアプリWallet+(ウォレットプラス)は口座情報を連携するとアプリ内で簡単に預金残高や収入支出を管理できます。またユニークな機能としては目的預金といって、アプリ内で架空の預金口座を立ち上げて、例えば旅行資金や買い物のための預金を見える化することもできます。

これはかなり秀逸な機能で、このサービスによってユーザは誰に言われなくても自分の欲しいものやしたいことをアプリ内に登録します。よって、サービス提供側から見ればこれはユーザの購買行動に直結する、かなり信頼性の高いデータを収集することができます。

このように、きちんと設計されたタッチポイントはユーザとのコミュニケーションに格好の場になりますし、コミュニケーションが成熟すればそれは極めてビジネス的価値の高い個人情報のプールになります。

さらにFFGはこのサービスを系列の銀行のほか沖縄銀行、広島銀行、山梨中央銀行の顧客にも開放しています。このことによりさらに豊かなデータが手に入るのみならず、面的な拡大によるシステムの維持効率化にも寄与しています。

SBIホールディングスは地銀に出資し経営の効率化とレバレッジをはかる

また、苦境の地銀と協業して最近精力的に動き始めている企業があります。それがSBIホールディングスです。

SBIホールディングスは地銀の中でも特にビジネスに苦しむ数行とすでに資本提携を始めています。具体的には地銀の株を多く取得することで経営に対する指導的立場を手にしました。

SBIホールディングスが地銀へ出資 勝算を「地銀はもうダメ」論から考える
地方銀行はもうダメだ--。半ばあきらめに近いこの種のフレーズは、今やビジネスパーソンの間でなかば常識だといっても過言ではない。一方で、島根銀行と資本業務提携を実…

SBIグループはもともと証券サービスに強みのある企業です。地銀と提携した暁には、まず有価証券の運用を引き取り、かつより上手く運用することでしょう。

ファンドは大きいほうが有利ですから、提携行が増えればますます効率的な運用が可能になります。これはお金と事業の委託だけの問題ですから、権利の関係が明確な今さほど労せず実現することと思います。

ある程度スキームがなじんだ後はITシステムにメスを入れる可能性があります。その際のインフラストラクチャはクラウドが選ばれる可能性が高いと思います。

複数の金融機関のシステムとユーザIDを単一のシステムで取り扱うような構成もクラウド上のほうが構築しやすいためです(シングルテナント構成といいます)。

また、システムそのものについても規模の経済が活きますので、ユーザ当たりの維持コストはさらに引き下げることが可能です。

このように相対的な経営効率は非常に理にかなっていると言えるでしょう。このスキームを取り仕切るのがネット専業サービサーのSBIであるということも政治的に収まりがよいようです。

まとめ

この記事では、先進的な金融機関が取り組みを始めているビジネスを例に、今後の地銀を取り巻く状況の変化について筆者の予想も踏まえ書かせていただきました。

すでにFFGとSBIの戦略が示すように、ITによるタッチポイントの強化の一方、より効率的な経営とシステムによってオペレーションコストを下げる大きな方向感で改革が進んでいく可能性は高いと私は考えます。

そして現状この波に乗り切れていない銀行がどこかのポイントで自前路線をあきらめ、SBIのような大きなグループの傘下に入るような将来も起きることと思います。

もはやすべての地銀が自力で復活することは不可能と私は考えます。

ベストシナリオは経営に優れた地銀(あるいはほかの有力な金融機関)が主導しほかの地銀を飲み込みつつ規模と効率性を活かした経営に切り替えることでしょう。これが最も市場のインパクトも小さくなるのではないでしょうか。

逆にワーストシナリオは独自路線を守り切れず破綻が連鎖し、地方経済が大混乱するような状態かと思います。その場合は日本経済全体に対しても大きな悪影響は避けられません。

当ブログでは今後も再編と統合が進む地銀業界の動向を随時発信してまいりたいと思います。

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

為替取引を始めるなら≪DMM FX≫

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

IT企業で働いています。このブログではIT、キャリア、資格などについて発信しています。My opinion is my own.

Huliをフォローする
the Biztech blog

コメント

タイトルとURLをコピーしました