遅れをとる日本のIT戦略|レガシーを抱え続ける4つの致命的なデメリットとは

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クラウド/DX 雑記

日経コンピュータにこんな記事が載っていました。日本のITベンダーに対しユーザー企業が大きく不信と不満を持っている、という内容です。

IT業界3つの時代遅れ ユーザー企業の怒り爆発寸前
IT(情報技術)製品とサービスを提供する「ITベンダー」への評価を、製品・サービスを利用する「ユーザー企業」の意思決定者に聞く日経コンピュータ恒例の顧客満足度調査。24回目の今回は、14部門で首位が代わる波乱の結果となった。ユーザーは品質、コスト、ニーズの3点で時代遅れのベンダーに対し不満を強めている。事業構造や収益モ...

要約しますと、

  • 属人的かつ全体的なSEの質の低下により、品質が安定しない
  • 古臭い方法、手法の提案がユーザー企業のニーズに合わない
  • 自社製品の高額かつブラックボックスな値付けを通そうとする

と言った感じかと思います。この記事では日本の、いわゆるSIerが抱える時代との不整合について解説します。

SIerは人の稼働で収益をあげるモデル

まず、有名な話ではありますがSIでは『工数』『人月』『単価』という要素で顧客への見積もりがなされます。要するに、この仕事にはXXの作業量が必要なので、X人の人がYヶ月稼働するのが妥当だ。X人の平均単価はZ円なので、お見積り総額はX*Y*Z円です。というような格好です。

デメリット1:手にする価値とコストとが一致しにくい

ここで1つ目のデメリットです。先述の見積もり計算を見ていただきますと、生産性という大切な要素が抜け落ちていることがわかるでしょう。日経コンピュータの記事にもスキル不足SEが却って現場を混乱させるとあるように、エンジニアリングの世界では人ごとの生産性は大きく異なります。軽自動車をいくら使っても崖を登れないように、生産性の低い人を何人投入しても根本的な対応は難しいです。世界の企業はそれがわかっているからこそ一部の超ハイパフォーマーに莫大な年収を支払うのです。

ファーウェイ、新卒に3000万円 CEO「世界から募集」
【広州=川上尚志】中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は高度な技術を持った若手人材の採用を強化する。博士号を持つ新卒者に対し、中国のIT企業幹部などと同等水準の最大約200万元(約3100万円)の年俸を提示し、採用する。年内に最大30人、20年には同300人程度の採用を目指す。米国の制裁で米企業との取引が制限さ...

翻って、SIの見積もりモデルではこうした人ごとの生産性の大きな差をオミットしてしまっているため、極端を言えば生産性の悪い人を大量投入すればするほど儲かります。教育の手間もいりませんので原価も低減できて高利益になります。

当然、高い支払いに対して完成したソフトウェアの質は顧客の満足の行くものではない、ということが往々にして発生します。

デメリット2:プロジェクトの炎上、長期化

この構造で同時に起こり得ることはプロジェクトの長期化です。船頭多くして船山に登っているわけですから、最適なリソースを投入した想定よりも現場が混乱することは当たり前です。

プロジェクトが長期化するとそれだけ内外にかかるコストは増えます。のみならず、ビジネスの変化が激しい現代にあって、不要にローンチまでの期間が伸びればそれだけの機会損失を生むことにも繋がります。

とはいえ、ユーザ企業にも失策はあった

もちろん、現状のジレンマはITベンダーのせいだけではありません。一般論ではありますが、20世紀後半からの日本の経営者はITの力を上手く経営に活かすことができていませんでした。

IT部門の苦悩(12):日本の経営環境ではITの効果が出ない
日本のIT部門が25年間以上、苦悩を続けているの前回までの通り。今回からは、なぜそうなってしまったか、産業的かつ社会的な背景を議論していきたい。

理由としては、製造業=モノづくり信仰が強すぎたためであるとか、人材の流動性が問題であるとか、プログラムのベースになる英語の問題だとか色々と言われておりますが、事実として欧米中のグローバル企業と比較するとITによる経営の効率化は進んでいません。

当ブログの別の記事でも書かせていただいたように、一部の業界では特にITを単純なコストと見なし、ベンダーへ丸投げする風潮が進んできました。

デメリット3:ロックインはモノの値段だけを釣り上げる

その結果、デメリットの3つ目が起こります。ユーザー企業内にITに関するノウハウが蓄積しない、ITを知る社員がいなくなると、もはやベンダーなしでは社内の業務が成り立たなくなります。そうなりますと当然ベンダーも顧客に対して交渉力を持ちます。顧客としては前述のような見積もりや、そこに付帯するベンダー謹製のハードウェア、ソフトウェアを不承不承ながら購入し続ける以外に選択肢がなくなります。

デメリット4:IT戦略の欠落は極めて大きな機会損失

4つめにて最も大きなデメリットは、IT戦略の無さは極めて大きな潜在的売上のロストにつながるということです。

ITシステム戦略で遅れた企業は売上増の機会を大きく逃す可能性--アクセンチュア調査
アクセンチュアが「リーダー」として評価した企業は、エンタープライズ技術を個別の対処策ではなく、システムとして認識しており、クラウドやAI、ビッグデータ、IoTの導入を進めているという。
  • 技術導入、導入の深さ、企業文化としての導入準備体制を基に企業を評価した。そして上位10%をリーダー、下位25%をラガード(遅延者)と位置付けた。
  • IT戦略とビジネス戦略を一体化するために、部門横断的なチームと連携しているリーダーは91%、ラガードは41%だった。
  • 2018年に、ラガードは年間売上高にして15%を逃しており、エンタープライズ技術の変化なくしては、2023年までに売上高成長を46%逸失する可能性がある。

まとめ

日本企業のIT戦略の遅れは、歴史的経緯も踏まえてユーザとベンダ双方の失策が招いたと解説しました。

ユーザ企業の打ち手としては、自分たちの発注者としてのリテラシーが低いことも素直に認め、今後はITと戦略に対し理解のある、できるだけ若い方をリーダーとして登用されることを切に期待しております。

次世代のリーダーがベンダに対し適切な要求と交渉をはかるようになれば、ベンダの側ももっと劇的な変化をせざるを得ません。そうして、IT市場全体の活性化と先進化がなされれば、国全体での生産性も向上するものと私は考えています。

今回は以上です。お読みいただきありがとうございました。

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